Project Story

アジア最大の印刷技術展示会で大きな成果を上げた
プロジェクトチームの「情熱」と「協調」

2017年5月に中国・北京で開催された、アジア最大の印刷技術展示会「CHINA PRINT 2017」。KOMORIは、中国を中心としたアジア市場における事業拡大を加速するため、「OPEN NEW PAGES」をメインテーマに掲げて出展した。その成果とプロセスについて、展示会開催の1年前から準備に取り組んだプロジェクトチームの主要メンバー3名に話を聞いた。

  • 輸出一部中国販売課 課長
  • 2004年入社
  • 経営学部経営学科卒業
  • 枚葉開発部開発2課 係長
  • 1999年入社
  • 工学部精密機械工学科卒業
  • PESP事業推進部
    グローバルマーケティング課課長
  • 1985年入社
  • 法学部法律学科卒業

※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。

チーム一丸で「人を惹きつけられる」レイアウトを実現

4年に1度開催される「CHINA PRINT」は、アジア最大、世界第2位の規模を誇る印刷技術の大展示会である。2017年5月に開催された「CHINA PRINT 2017」を成功に導き、中国を中心とするKOMORIのアジア市場の販売戦略を推進するために編成されたプロジェクトチームのリーダーを務めたのは、輸出一部の中国販売課 課長である。彼は任命された時の心境をこう述懐する。

「展示会事務局の主任として、開催1年前の2016年夏から全社的なプロジェクトをスタートしました。私が担当したのは、販売戦略の策定、日本と中国に設けられた分科会の進捗管理、ブースのレイアウトやデコレーション、イベント対応や大型機の搬入搬出など、あらゆる準備作業です。2010年から中国とのビジネスを担当していますが、これほど大規模なプロジェクトを任されたのは初めての経験だったので、相当なプレッシャーを感じました。」

中国市場も欧米と同様に多品種小ロットの印刷ニーズが高まっており、オフセット印刷機械に加えて、高品質なデジタル印刷機械の需要が増えつつある。オフセットとデジタルを融合した強みを活かしながら、優れた品質を実現するKOMORIの技術をどうPRしていくかが最大の鍵となった訳だが、その戦略と想いについて語るのは、枚葉開発部開発2課の係長だ。当時、中国の現地法人に駐在していた彼は、現地スタッフの一員としてブースのレイアウトを担当することになった。

「2016年にドイツで開催された世界最大の国際総合印刷機材展drupa(ドルッパ) に続いて掲げた “オフセット印刷とデジタル印刷を融合したソリューション”というコンセプトを来場者に伝えるために、限られたスペースの中でどのように大型の印刷機械を配置するべきかを、色々と模索しました。」

ブース内の人の動線や商談への流れを意識しながら、KOMORIの中国スタッフや展示会関係者と調整して、最適なレイアウトの決定に取り組んだ。様々な制約がある中で、どうすれば「人を惹きつけられる」レイアウトを実現できるのか悩んだ開発2課 係長。プロジェクトチームのメンバーとコミュニケーションを緊密にし、徹底的に意見交換を重ねたことで、最終的には諸要件を満たす納得度の高いレイアウトの実現に繋がったと語る。

展示会の成功をバネに中国市場のシェア拡大へ

「イベントの成功は準備で8割決まる」と経験に基づいた持論を語るのは、PESP事業推進部グローバルマーケティング課 課長である。彼は、本展示会においてグラフィックデザインや展示物の装飾、ブースの照明、映像、音響など、演出全般を担当した。そのコンセプトと表現プランについて次のように述べる。

「最も苦労したのは、KOMORIのブースにいらしたお客様に、過去の国際展示会でPRしてきたブランドイメージを感じていただくことです。どこの国のどこの展示会に行っても、KOMORIらしさを感じていただければ、安心してじっくり展示物を見てくださいます。今まではオフセット印刷機械のエリアにブースを出展していましたが、今回は初めてのデジタル印刷機械のエリアに出展して、“オフセット印刷とデジタル印刷の融合”というコンセプトをトータルで表現しました。」

出展する印刷機械を決定するまでにかなり時間がかかったため、レイアウトや装飾は極めてタイトなスケジュール進行となったが、納期に遅れることなくクオリティの高いデザインを実現したのは、彼の「準備」にかける熱意が結実したことに他ならない。

レイアウトやブースのデザインが決定して、ひと息ついたのも束の間、プロジェクトチームは想定外の問題に直面して騒然となる。中国販売課の課長は当時の状況を振り返った。

「開催間際になって、会場の都合で搬入搬出の準備期間が12日間から7日間に短縮されたことを知らされたのです。今回展示した印刷機械は大型なので、従来の展示会と同じように搬入・組立していては、とても時間が足りません。慌てて初動を誤らないように、落ち着いて対応策を考えなければなりません。まず、作業工程を見直して、準備期間を短縮するために現地のスタッフに応援を頼み、いつもなら3人から5人で行う作業を10人態勢に増員しました。さらに、日本から出張で現地を訪れていた社員も事情を知って、自分の仕事の範疇を超えて力を貸してくれたのです。これは本当に有り難かった。この危機的な状況を無事に乗り越えられたのは、目標に向かって一致団結して大きな力になるKOMORIの強みを十分に発揮できたからです。」
不測の事態を収束に漕ぎ着けることができた要因は、チームの冷静かつ迅速な判断力とKOMORIの強い結束力だった。

5日間に渡って開催された「CHINA PRINT 2017」において、KOMORIのブースは連日来訪者が溢れるほどの大盛況となった。ブース内のレイアウトを担当した枚葉開発部開発2課 係長が展示内容について語ってくれた。

「ブースに展示したのは、2台のオフセット印刷機械と1台のデジタル印刷機械です。独自のH-UV(ハイブリッドUVシステム)の速乾印刷により、かつてない小ロット・短納期を実現する2台のオフセット印刷機械には、用紙を反転せずに両面印刷する両面ワンパス構成をはじめ、KOMORIの革新的なテクノロジーが結集されています。新製品のインクジェットデジタル印刷機械は、優れた色の階調再現によりオフセットに迫る高品質印刷を可能にしました。お客様は、これらの印刷機械を融合することで、多品種少量生産やバリアブル印刷はもちろん、パッケージ印刷など商業印刷分野にもビジネスを拡大できます。オフセット印刷とデジタル印刷のカラーマッチングを実現するソフトウエアK-Color Simulator 2や、最新のICT技術で印刷機械の稼働を“見える化”して生産性向上に寄与するクラウドサービスKP-Connectも注目を集めました。」

デジタル印刷とオフセット印刷の融合を実機のデモで訴求する展示スタイルは、来場者から高く評価された。活況を呈した結果、中国市場では展示会キャンペーンの販売目標台数の倍近い成約を達成。プロジェクトは大成功を収めた。PESP事業推進部グローバルマーケティング課 課長は成功の要因をこう述べる。

「今回のプロジェクトに関連する部門全てが連携して、KOMORIの総合力を発揮できたことが結果に繋がったと思います。」壁にぶつかる度に、様々な人たちが力を貸してくれたと言う。また、多くの来場客と接した枚葉開発部開発2課の係長も今回の展示会での大きな手応えを口にする。

「今まで3台の印刷機械を必要としていた仕事を、たった1台でこなせるKOMORIの印刷機械のパフォーマンスをわかりやすくPRできたことが勝因です。中国の印刷会社様の多くは人件費の高騰と人手の確保に悩んでいます。生産性の高い機械を導入して台数を減らせば、機械を操作する人員の削減も可能になります。省力化の観点から当社の印刷機械に魅力を感じたお客様が大勢いらっしゃいました。」

オフセット、デジタル、資材・機材など、すべてのソリューションの提案を通して、印刷の新たな可能性を広げていくKOMORIの技術力は、中国市場に大きなインパクトをもたらした。プロジェクトチームのリーダーを務めた中国販売課の課長は、今回の成功をバネに、早くも次の戦略を構想している。

「今、中国の印刷業界では、市場の成熟に伴う印刷の高品質化や環境規制の厳格化、人件費高騰などの問題に対する関心が高まっています。これはKOMORIがこれまで培ってきた様々な技術やソリューションを提案する好機です。今回の展示会を通じて、中国の首都北京でKOMORIの技術力をしっかりPRできたことが、目標を大きく超える成果を生んだ理由だと思います。今後は、クラウドを活用して印刷の前工程から後工程までの作業フローを可視化・一元管理するKP-Connectによる印刷工程の最適化・自動化の推進に加えて、廃液の処理や水のろ過といった規制をクリアするための環境対応技術を付加価値として印刷機器市場を開拓していきます。」と力強く語る彼は、中国市場のさらなるシェア拡大に自信を覗かせた。