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02

新規事業にかける思い、
モノづくりにかける思いを語る

KOMORIが将来の主力製品と位置付けているデジタル印刷機械の設計開発を担うのが、つくばプラントにあるDPS開発部である。高品質な印刷物をハイスピードで大量に印刷するオフセット印刷機械とはまったく異なる、多品種変量、小ロットの市場ニーズに技術でどう応えていくか。またデジタル印刷機械は、より簡単な操作で印刷できるオペレーターのスキルレス化対応への要求もきわめて高い。データを入れれば、必要な部数の印刷物が直ちにアウトプットされるデジタル印刷機械の誕生へ。
待望の市場投入に向けて設計開発チームを指揮するリーダーと若手の開発者に、新領域の製品づくりを託された現場の思いを語ってもらった。

  • DPS開発部DPS設計2課 課長
  • 1996年入社
  • 工学部機械工学科卒業
  • DPS開発部DPS設計2課
  • 2015年入社
  • 工学部機械工学科卒業

※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。

初の市場投入に向けて、連携を密にして要求機能に応える

君は新卒入社の年にすぐDPS開発部に配属されて4年目になるよね。私は長い間、オフセット印刷機械の開発業務に従事してから、今のデジタル印刷機械の担当になった分、技術基盤の大きな違いは感じつつも、印刷機械のベースになる知識や開発プロセスはある程度、活きている部分はある。その反面、入社していきなり新規事業であるDPS開発の現場に飛び込んだとき、不安や難しさは感じなかったかな?

入社1年目は知識も経験も少なかったため、もちろん不安はありましたが、それがDPS開発部だからという訳ではなかったです。もともと入社したときからデジタル印刷機械に携わりたいと思っていましたし、新入社員の私にとっては、オフセット印刷機械でもデジタル印刷機械でも一から基礎技術を勉強しなければならないのは同じなので、とにかく頑張るのみという気持ちでした。実際に設計開発に携わり、感じたことは、設計後の工程のことを考慮する大切さですね。私が作成した図面は加工業者さんが不具合なく部品を作成できる正しい加工指示や形状となっているのか、その部品は生産現場で組み付けやすくなっているのかを、いつも自問しながら取り組んでいます。

そうだね。われわれが手がけるデジタル印刷機械は市場投入がこれからなので会社としての経験則は少ない。だからこそ生産現場を含めた他部門や協力会社との連携が大切であるし、要求機能を満たしているか、工場設備を効率的に活かす仕様なのかなど、専門家の意見を聞いて評価・検証するプロセスが重要だと思う。現在、君には今開発中のB1サイズのインクジェット印刷機械の紙搬送装置を担当してもらっているけど、デジタルは用紙サイズが大きくなるほど制御が難しくなるよね。

それは苦労するところです。フィーダー(給紙)からデリバリー(排紙)まで紙搬送全般を担当していますが両面刷りの場合、反転機構などエアで制御するところがあるので、どうしても大きな紙は暴れやすいですね。くわえ(*)位置など、ミリ単位の非常に精密な調整が求められます。そういう難しい課題を試行錯誤しながらクリアしていくのが、この仕事の楽しさでもありますが。

固定観念にとらわれないアイディアを、設計に活かす

デジタル印刷機械は、オフセット印刷機械と商品特性がまったく違って、いかに簡単なオペレーションで、多種少量の印刷ができるかが鍵。つまりデジタル印刷機械特有の「バリアブル」「スキルレス化」のニーズがまずある。一方でオフセット印刷にも通じる大きい用紙サイズへの要求にも対応していくことで、より競争力の高いデジタル印刷機械を市場投入していきたい。現状のデジタル印刷機械の主力製品はB2サイズ。われわれが開発中のインクジェット印刷機械はその倍のサイズだから、市場にもたらす生産性のメリットは大きいはずだ。

少しでも早く市場投入できるように、私自身もそこにしっかりと貢献できるように頑張りたいです。携わっていて嬉しいのは、KOMORIの将来にとって重要なこうした開発に、まだまだ経験の浅い私を起用してくださっていることです。任されている設計開発業務も紙搬送装置全般と広範囲ですし、各部品の機能分析から機能改善の私なりのアイデアを取り入れた図面作成まで経験できる仕事が多いです。DPSの開発チーム全体としても、課長を筆頭に経験豊富な先輩方が丁寧にご指導くださり、また若い私たちの発想を尊重してくださるので、それはありがたいなと思っています。

いまのDPS開発チームの組織は、全体にとても若いからね。将来の中心メンバーとして育てていくには、とにかく任せてみることが必要だと思っているんだ。自分で考えて答えを出すまでは、細かく口を挟まずに、提案などをまとめてくれたときや、何か相談を受けた際にはサポートするようにしている。デジタル印刷機械の市場投入は事業の第一ステップであって、その後もデジタル印刷で収益を上げるところまで機能面、品質面、コスト面とさまざまな要求に応えながら進化させなければならない。いま若い人たちが経験していることがその時に活きてくるようにしたいね。ところで君は、去年イスラエルに出張したよね。

はい、一週間でしたがとても勉強になりました。損紙排出装置の評価業務で、共同開発会社の方々と現地でいろいろとやり取りをさせていただきました。私はあまり英語が得意ではないので、コミュニケーションは正直大変でしたが、何とか聞き取りながら、発言するときは図面を広げて身振り手振りのボディランゲージで伝えました。入社3年目の開発担当者が、イスラエルに出張させてもらうなんて、本当に光栄なことだと思っています。実は私、海外に行ったのもあれが初めてでして・・・ありがたい経験でした(笑)。

それはよかった。技術者としては若くてこれからの人財に、大事なミッションである海外出張に行かせるのは、 会社としてもなかなかのチャレンジだったんだけど、私は得るものもきっと大きいから経験させてみましょうと押したんだ。さて当面は、私自身もそうだけれど、チーム全体で力を合わせて、市場にまず1台デジタル印刷機械を出すのが目標になるね。今は毎日忙しいと思うけど、この先の個人的な目標や挑戦してみたいことは、何か考えているかな。例えば5年後とか10年後の・・・。

もっと勉強して、開発担当として数多くの経験も重ねていって、デジタル印刷機械領域のエキスパートを目指していきたいと思います。現在は紙搬送装置の部分で、オフセットの既存技術をデジタル印刷機械に合わせ込むようなところが多いですが、固定観念にとらわれない柔軟な発想で、新しい技術提案ができるようになりたいですね。それからインクジェットの印刷部分のところには、私自身まだ入っていけてないので、いずれはそこにも携わって、力を注いでみたいです。いつかは課長のように開発チームをまとめあげられる力をつけられるように頑張っていきます。*くわえ:印刷機械に用紙を通す際に、フィーダーにある用紙を爪でつまむインクがつかない部分。